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◯ 日本糖尿病医療学学会 代表理事 挨拶

寺内 康夫
横浜市立大学 内分泌・糖尿病内科学 教授

 令和4年6月の社員総会、新理事会で日本糖尿病医療学学会代表理事に就任することになりました寺内康夫です。糖尿病医療学に対する私の認識と今後の活動方針を述べさせていただきます。

 厚生労働省の国民健康・栄養調査によると、糖尿病が疑われる人、可能性を否定できない人を合わせると約2,000万人といわれています。しかも、高齢化が進んでいます。新たな糖尿病治療薬の開発や臨床応用が日々進み、透析予防に代表される合併症予防、心筋梗塞・脳卒中などの大血管障害への対策、さらには高齢化などで増加する併存症(サルコペニア、フレイル、認知症、悪性腫瘍など)の予防・管理を講じていくことが求められます。

 薬物治療の進歩により、物理的には目標血糖に到達可能になってきましたが、治療オプション、患者の取り巻く環境の多様化のために、血糖を下げるプロセスが重要視されるようになってきました。つまり、目標を最適化する必要性、個別化治療が強く認識されるようになってきた訳です。しかし、一つ問題があります。「個別化治療」は血糖管理の視点だけで十分でしょうか。糖尿病を有する人の視点に立った「個別化治療」を実践されていますか。

 例えば、初診時には高血糖による症状(口渇,多飲,多尿,体重減少,易疲労感など)や合併症を疑う症状(視力低下,下肢のしびれなど)の有無と経過.糖尿病の治療歴(治療中断の有無など)肥満,高血圧,脂質異常症,脳血管障害,虚血性心疾患の有無と経過(治療歴)、糖尿病の家族歴の有無、食生活,身体活動度などの生活習慣などを丁寧に問診しますが、糖尿病に対する想い・不安・不満を十分に聞き取れているでしょうか。糖尿病を有する人にとって、「糖尿病」は一つの属性に過ぎません。その人のライフスタイル、価値観、糖尿病に対する想いなどを理解しようとしているでしょうか。

 適切な糖尿病診療を目指そうとする国の方針と、治療を受ける人との間に対処できない隔たりがあり、的確な医療連携のフレームワークを構築する必要性が急務であったことから、2000年に日本糖尿病学会、日本糖尿病教育・看護学会、日本病態栄養学会が母体となり、日本糖尿病療養指導士(CDEJ : Certified Diabetes Educator of Japan)認定機構を設立し、CDEJの資格認定を行うことになりました。私はCDEJ認定機構の5代目理事長として、全国のCDEJの皆さんの声を聴きながら、糖尿病を有する人への寄り添い方、療養支援について考えてきました。

 治療方針・治療継続の必要性を理解しているにも関わらず、ストレスを感じながら治療を続けている人が多いのが現状で、治療を継続するためには、治療モチベーションの維持・向上が鍵です。モチベーションを高める因子もあれば、阻害する因子もあります。糖尿病を有する人が本来備えている自己管理能力を最大限引き出し、糖尿病学会が掲げる「糖尿病のない人と変わらない寿命とQOL」という目標を達成するため、糖尿病を有する人に寄り添うことのできる、真摯で誠実な医師・スタッフを全国レベルでもっともっと増やしていく必要があるのです。

 私自身、本学会において、平成30年2月の第1回日本糖尿病医療学学会関東支部集会、平成31年2月の第2回日本糖尿病医療学学会関東支部集会、令和2年2月の第3回日本糖尿病医療学学会関東支部集会、令和2年10月の第7回日本糖尿病医療学学会学術集会、令和3年10月第8回日本糖尿病医療学学会学術集会の企画・運営に学会長という立場で関わらせていただき、現在は令和4年10月の第9回日本糖尿病医療学学会学術集会を集合型で開催できないか、鋭意準備中です。

 糖尿病を有する人の視点に立った真の意味での「個別化治療」を実践するために、本学会の仲間と情報共有・議論したい症例を持ち寄り、問題点を把握、議論を重ねることで、よりよい対処法を模索しようではありませんか。病を有する人をみる(診る・看る..)という観点では、糖尿病に限ることはないのかもしれません。現在、療養支援の制度は、腎臓病、心疾患、動脈硬化性疾患に広がっています。また、本学会に参加されている皆さんの中には、糖尿病以外の疾患もカバーされている方がいませんか。大事なことは、糖尿病医療学が追求する理念を多くの医療者に広めていくことだと思います。

 これまでの医療学研究の流れを継承し、学術団体としての学会活動をさらに推進するとともに、産業界や社会に向けた活動も視野に入れ、糖尿病医療学の更なる発展に貢献します。新しい試みも意識的に取り入れながら、本学会を益々発展させるために努力していきますので、臨床医、医療スタッフ、心理学研究者の皆様のご協力をよろしくお願い申し上げます。


◯ 日本糖尿病医療学学会設立理念

当学会は、糖尿病治療の人間的側面により深く焦点を当てた学問領域として糖尿病医療学を提唱し、患者の生涯に亘る糖尿病との関わりを視野に置いて、患者の心理と行動、医療者と患者との関係、患者による治療利益評価の測定等について議論と研究の深化を図り、もって糖尿病療養法の発展に寄与することを共通の目的とし、その目的に資するため次の事業を行う。

  1. 糖尿病患者の身体的及び心理的課題並びにその対策の研究
  2. 糖尿病の各種治療法の実行課題及びその効果的実行法の研究
  3. 医療者と糖尿病患者との関係、コミュニケーション及び支援の課題並びにその対策の研究
  4. 糖尿病の治療法及びその効果に対する患者評価を科学的に測定する方法の開発及び普及
  5. 糖尿病全般における社会的課題及びその対策の研究
  6. その他当学会の理念に合致する研究
  7. 前各号の研究成果の糖尿病患者及び医療者等への情報発信及び情報提供

◯ 学会の目的

糖尿病の診療を続ける中で、いろいろな困難や成功に出会います。その中には医学的なこと、すなわち治療法(例えば薬剤)そのものの選択や使用法、あるいは治療技術の習得に関することがあります。
 一方で、糖尿病を持つ人(患者さん)の自己管理や心の問題に出会うこともあります。そのようなとき、医療者は診療を通じて、良い方向に向かうようにサポートを続けるのですが、出口がなかなか見つからず、ともに悩んでしまうことも少なくありません。また、あることがきっかけとなってそこから抜け出す体験をされたかたもあるでしょう。
 本学会では、糖尿病を持つ人、その人たちをケアする人、ケアする人をケアする人、取り巻く環境や社会、それらの人たちのこころと行動に焦点を当てて、糖尿病臨床‐医療を学ぼうとするものです。
 いろいろな事例、症例を持ち寄っていただいて、通常の学会より時間をかけて(演題数にもよりますが短くても20分くらい)じっくりと検討会をやりましょう。その中から糖尿病治療に対する知恵と元気を得たいと思います。


◯ 役員(五十音順)

役職 氏名 所属
代表理事 寺内 康夫 横浜市立大学大学院医学研究科 分子内分泌・糖尿病内科学 教授
理事 皆藤 章 奈良県立医科大学 医師・患者関係学講座 特任教授
福井 道明 京都府立医科大学 大学院医学研究科内分泌・代謝内科学 教授
     
顧問理事 石井 均 奈良県立医科大学 医師・患者関係学講座 教授
     
監事 林野  泰明 天理よろづ相談所病院 内分泌内科 部長、糖尿病センター センター長
山川 正 Personal Wellness Clinic MARUNOUCHI 院長
     
    (2023年11月10日現在)